2009年7月14日、47日後。傷跡は残らず、早期に治癒
初診時(2009年5月29日)、65歳。黒変部(↑)は
銀の作用による
化学火傷
化学火傷 Chemical Burn(Ⅱ度熱傷)
顔面外傷
顔面外傷(擦過傷、皮下出血斑) Abrasion,Subcutaneous Blood Spot
■患者:63歳、女性
診断および治療経過:
2006年10月 7日;お寺の境内でつまずき転倒。当日は救急でMRIやX線検査等にて骨折の有無を確認。
2006年10月 9日;外科で傷の処置。抗生物質の投薬なし。右頰骨部擦過部にテープのみ。
2006年10月10日;受傷3日目に来院。特に大きな異物混入がなかったため、生理食塩水でDebridmentを洗浄後、ゲンタシン軟膏(99.9%白色ワセリン:White
Petrolatum)を塗布し、さらにラップ療法(ポリウレタンフィルム・ドレッシング材)を行った。右内眼角部、右頰骨弓部、右オトガイ部、右下顎角部に病変部相当大のApplicator(導子)で内Diathermy各5分間透射。クラビット、ノイダーゼを投与した。
2006年10月11日;前日と同様の透射時間。ラップは除去し、傷表面のみ洗浄。
2006年10月12日;同様の透射時間、傷表面のみ洗浄。
2006年10月13日;同様の透射時間、傷表面のみ洗浄。
以上で完治した(殺菌・消毒薬は一切使用していない)。
ツルツルの皮膚が再生したということは、傷の上皮化が完了したということである。表皮(外胚葉)欠損が起こって、その下の真皮(中胚葉)が露出しても、毛穴・汗管は真皮の奥まで残っているため、この外胚葉組織が傷の表面に顔を出して上皮化が進み、周囲に広がって、互いに癒合して表皮が再生(上皮化)する。再生した皮膚は、しわ一つなく、赤ちゃんのほっぺのようにピンク色をしてツルツルしているのが特徴である。生まれたての皮膚は色素沈着を起こしやすいので、UV対策が必要である。
キスマーク(吸引性皮下出血) Subcutaneous Hemorrhage
2009年7月14日、46日後。水疱のできた深部は毛根が無くなっている(傷跡はまったく残っていない)
初診時(2009年5月29日)、65歳。黒変部中央は水疱がすでに破れている(激痛部位)
酸性薬品の場合にはアルカリで中和(逆も同じ)と言われるが、研究室でpH-Meterで測定するのであれば可能であるが、臨床の医療現場でどの様に測定するのか、方法が有れば教えて欲しい。長年研究室にいたのでよく分かる。中性・中和時点を判定する方法が無いのである。とくに、救急の場合は。一番良いのは多量の水道水である。とりあえずいち早く洗い流すのである。いかに早く痛みから解放し、傷跡を早期に無くすかが勝負である。
ガーゼ、消毒薬、抗生物質の投薬などは一切していない。
4日目(10月13日)。瘢痕を残さずきれいに治癒。痂皮は自然に融解(うるおい治療効果)
3日目 (10月12日)。頬骨部の上皮化(内Diathermyとうるおい治療の効果)と皮下出血斑の消失(内DiathermyとHSPの効果)が著明。サングラスが不要になったと喜んだ
翌10月11日。下眼瞼および内眼角部の皮下出血斑が著しく消失。内DiathermyとHSPの効果が著明
初診時(2006年10月10日)、63歳。右頬骨弓部、右頤部、右下顎角部に痂皮形成を伴う擦過創を認める。特に右内眼角部、下眼瞼の皮下出血斑が著明。受傷後約10分で出血斑が現れたようである
10月13日、右側。内科的DiathermyとHSP、湿潤治療の相乗作用で、常識を破るスピードで創傷治癒が起こる。瘢痕をまったく残さずきれいに上皮化
10月10日、初診時の右側。一般外科での傷の手当てはここまで。創面に砂などの異物混入はなかった
・1週間以上、長期間加療を宣告されたが、わずか4~5日で完治した。
・薬剤投与無し。
・使い捨てカイロの平均温度は53~70℃で本症例では高すぎる。HSPの観点からは、 41℃が至適で、皮下組織の少ない前頭部 (顔面)を考慮してEye
Mask(約40℃) が最適であった。
・トランサミン、抗生物質など全く必要が無い。皮膚科では止血目的で“抗プラスミン作用”が投与されたが、本症例のような負圧内 出血では、これ以上の出血は通常起こり得ない。血液疾患などで凝固・線溶系に異常のある者は止血薬も必要であるが・・
治療目的は皮下出血を如何に早く吸収さすかである。
・一次止血、二次止血の凝固機転を考えても、血小板、フィブリンなどの活性を高めるためにも、ICINGは禁忌である。当Clinicの外 来外科手術後、ICINGすることは未だに一度も無く、好結果を得ている。
・民間療法の“キスマークの消し方”の方が、病理学的に的を得ている。
・全期間を通じて、物理的療法で完治した。超高齢化社会になり、“ポリファーマシー” (図 9)が問題になっているなか、当Clinicでは 少しでも投薬を減らし、相互作用の少ない“物理療法”を勧めている。
今後の展望
薬剤耐性菌の問題、患者様の投薬に対する意識の向上、薬剤投与が好ましくない妊婦や高齢者、あるいは薬剤がほとんど効かない疾患などに対しては、ジアテルミーの有効性が期待される。
2009/05/28 PM4:00:歯科医院にて左下Crの脱離後の再装着処置を受ける。その際、感染牙質を硬化さす目的で、フッ化ジアミン銀(サフォライド)を塗布。
2009/05/28 PM6:00:他人に右口角と左上唇部に皮膚の黒変を指摘される。
2009/05/28 PM6:30:上記歯科医院を再受診。局所洗浄後、ヨード(中和を目的に)を塗布される。その後、激痛が生じ、当clinicに紹介される。希ヨードチンキのpHは約3.8。
多量の水道水でフッ化ジアミン銀(サフォライド)とヨード剤を洗い流し、ゲンタシン軟膏を塗布、その上を湿潤状態を確保するためTegadermTM Hydrocolloid ThinでTapingしDermaporeで固定。局所に内科的Diathermyを透射。この時点で、激痛が嘘のように消失。HSP産生を促進させるように指示した。夜間睡眠時には、Maskをしてもらい、湿潤状態を確保していただいた。
この一連の治療法をDiathermyを利用したMoist Wound Treatmentと言う。
(図 9)ポリファーマシーは、”Poly”+”Pharmacy”で多くの薬ということである。患者が必要以上に多種類の薬を処方され、何らかの有害事象が起こること
(図 8)7日目(2018年10月26日)
(図 7)5日目(2018年10月24日)。周辺部から吸収され、拡大しなければほとんど目立たなくなった
(図 6)3日目(2018年10月22日)。病変部境界が不鮮明になってきた。既に帽子の必要性は無くなった
(図 5)初診時(2018年10月19日)。典型的な吸引性皮下出血
(図 4)初診時(2018年10月19日)。これでは外出できない
(図 3)吸引面
(図 2)背面
(図 1)つぼール(直径約30㎜)