●無歯顎になっても骨吸収を防ぐ意味で定期的検診が必要な 症例がある。

●歯牙喪失は、義歯やImplantで代替えできる症例ばかりではないので安易に考えるのは危険である。

●患者の歯周病を診てもらうのではなく、歯周病の患者を診てくれる医師を探して受診すのが賢明である。

●当Clinicでは歯科医や衛生士本人が歯周病で来院され、その治療を数多く経験している。

(図6)初診から33年経過(2008年1月7日)、71歳。咬耗は進んでいるが、骨植は堅固である

(図5)32年経過(2007年3月5日)、70歳。SPTの重要性とDiathermyの効果

(図4)32年経過(2007年3月5日)、70歳。十分機能している


−歯周病の終末(T)−

■患者:75歳、男性。
 患者本人の自覚があまり無く、専門医に加療を受けずに歯周病が進行した症例である。1980〜1984年までは当Clinicで専門的にSPT(Supportive Periodontal Therapy)をしていたが、その後中断。2003年再来院した時には、下顎は他医院ですべて抜歯され無歯顎状態。下顎は総義歯になり咀嚼障害が著しい。約20年間で大部分の歯牙を抜歯されている。
定期的な局所のScalingとBrushingだけでは不十分である。歯周病はLifestyle Related Disease(生活習慣病)であるため、全身管理を含めたInterdisciplinary(包括的治療)が必要である。
(図1)初診時(1980年5月6日)、44歳。著者の診ていた時点では下顎骨は充分な骨質、骨量が存在していた
(図2)23年後(2003年5月19日)、67歳。適切な歯周病の加療とCareが無ければ、骨の吸収は進行する。義歯では充分咀嚼が出来ない。不適合な義歯はさらに骨吸収の進行を早める
■患者:75歳、女性。
 長年歯科治療を受けていたにもかかわらず、担当歯科医が歯周病の専門ではなく、その場しのぎの加療のみであった。そのため61歳で残存歯牙4本まで喪失した症例である。急性歯槽膿瘍を併発すると、切開と投薬の繰り返しの対症療法。膿瘍を繰り返す間が短くなり、動揺が大きくなると抜歯。挙げ句の果ては“
年だから”。患者は言われるままに順次抜いていく。マスコミやメディヤで取り上げられているほど、現実の臨床では専門的、積極的に歯周病治療が行われている所はまだまだ少ない

−歯周病の終末(U)−

(図1)初診時(1997年9月19日)、61歳。義歯不安定による咀嚼障害と咬合平面の左側低位(顔面のゆがみ)に由来する審美障害を主訴に紹介された
(図2)15年後(2012年2月16日)、75歳。初診時より残存歯の延命を図り3年間保存できたが、2000年にすべてを失った。現状では通常のレジン床義歯では対応できず、粘膜面に弾性材を用いて、2ヶ月毎に経過を診ている。すでに左側頤孔が歯槽頂に位置し、圧迫による麻痺が生じることがある。

−長期経過症例(歯周病)−

 当ClinicはすべInterdisciplinary Treatment(包括的治療)を基本にしている。禁煙、食事指導、Sugar Control、徹底的なPlaque Controlから開始する。その治療方法のItemの一つとしてDiathermyを取り入れることにより、長期に安定した症例が数多くみられるようになる。                                                     
■症例:歯周疾患 (図1−6)
患者:71歳、女性。

 著者が大学院学生時代からの長い付き合い(33年)の患者である。Sweetが大好物で、脂質異常症と高血圧症があるため、Sugar controlを常々指導するが、なかなか習慣は変えられないようである。長年、編み物教室の教師をしており、現在も毎日出張稽古で飛び回っているようである。ハイヒールをはいて社交ダンスを2〜3時間平気でしたり、毎年海外旅行へ行かれたり、非常に活動的な患者である。一時間かけて大阪から1回/月、
定期的にSPTに努めてくれている。        

(図1)初診時(1975年10月15日)、38歳。歯肉出血が主訴で紹介された。当時、歯周疾患治治療は一部の臨床家以外はあまり関心が払われていなかった

(図2)初診時(1975年10月15日)、38歳。まず徹底的なPlaque Controlから始めた

(図3)初診から2年後(1977年7月)、40歳。Splintせずに機能している

(図3)31年後(2011年5月6日)、75歳。これが歯周病の終末である。転倒すると容易に骨折の危険がある。QOLの低下は著しい。当然Implantなどができる骨量、骨質ではない。当ClinicでSPT(Supportive Periodontal Therapy)を続けて歯牙喪失をくい止めている。義歯は難症例である。歯周病は死の直接原因にはならないがQOLを著しく低下させる


★歯周病の治療とは、20年30年と抜かずに、口腔内が健康でQOLを維持できることである★
★生活習慣病のため短期間で治癒する病気ではない★

(図1)初診時、Wの膿瘍を頻していた。66歳(2005年3月)
 (図 2)3カ月後(2005年6月)
(図 3)1年後。急速に化骨が診られる(2006年3月)

(図5)2年後Mesh plate
固定
(20024)

(図4)初診時、63歳(20005)

(図6)6年後。歯槽骨は非常に安定している(20063)

(図7)6年後。急速に化骨がみられる
(2006年3月

(図8)6年後(2006年3月)

★抜く前に・抜かれる前にDiathermy!★ 

著書“Diathermy”の著作権侵害となるため、禁無断転載・複写。

症例:歯周病と歯科治療恐怖症(図4−8) 
患者:63歳、女性、 
週刊朝日(2006年6月)掲載症例。

診断および治療過程:当院で局所麻酔薬の皮内反応を調べた結果、シタネストのみ使用可能であった。しかし、患者は外科手術を極度に拒否したため、麻酔をまったく使用せず、治療は盲嚢掻爬とDiathermyに頼らざるを得なかった。
歯周膿瘍を頻発していた歯周組織がここまで回復した(図4−8)。
 歯周治療の分野での外科的Diathermyは、誘電加熱(80−90℃)によるポケット内の静菌効果が主であるが、出力の調整次第では無麻酔科でCrettageと同等の処置も可能である。さらに、環境因子が整えばLong Waveによる骨芽細胞の活性化の可能性も推測された。

          −重度歯周病への挑戦−

 歯周疾患のなかで、特に重度歯周疾患での応用を症例別に紹介する。基本治療は従来・現行の治療法を進め、さらにDiathermyメトロニダゾール(LDD-system)を併用することにより、時としてマジックのような症例に遭遇することがある。                                                       

■症例:重度歯周病(図1−3) 
患者:66歳、女性。

 全顎に及ぶ重度歯周病である。とくに下顎前歯に膿瘍の頻発がみられた。徹底的な初期治療と併行してDiathermyを応用する。患者は外科手術を望まなかったため、無麻酔下で、盲嚢掻爬とDiathermyを行い、歯周膿瘍を頻発していた歯周組織がここまで回復した(図2)。
 徹底的なプラークコントロールと生活習慣病の教育・食事指導の結果、保存を疑われた歯がDiathermyでここまで回復した(図3)。下顎前歯の咬合力の分配を図ったが、当初必要と思われたSplintは不要となった。農家の主婦で、食事の改善はある程度されたものの、大のフルーツ好きで、果糖制限はControlできていない。

Diathermyが歯周病を治す