■Dry Socket・Alveolar Ostitisスマフォ利用の遠隔治療 新症例
患者:57歳、女性
医療面接:帝王切開その他特記事項なし。
診断および治療経過:
CRP値、感染症および一般検血は時間の都合上検査出来なかったが、直近の検診結果は持参して頂いて全身状態の把握は行った。
- 受診前に送られてきたMail(一部校正)-
2016年8月16日;地元の歯科医院で抜歯(1件目)。ロキソニン、フロモックスを各3日分投与。
自宅に帰って口の中を見ると抜歯した横のかぶせた歯が黒色(図1)に変色しててショックだった。なんで変色?…左ほっぺたが腫れて傷 口がズキズキ痛かったが、夜は寝れた。1週間程で、ほっぺたの腫れがひく。
2016年8月19日;患部を消毒。ズキズキ痛みがあるが我慢できる程度。
2016年8月22日;1件目の先生の治療が怖くなった。友達に教えてもらって2件目の歯科医院。レントゲンを撮ったら化膿してると言われ 、麻酔を打って治療。ロキソとボキシル3日分 ネオステリングリーン1本投与。炎症しているとの事で、また痛みのある部分を治療。痛かったが、こんどこそ治るかもと希望を持ったが 傷口はいやされないし、痛みもかわらない。一体私の抜歯はどうなってるの?不安がいっぱい…
2016年8月26日;消毒。
2016年9月2日;3件目の歯科医院。 患部を消毒。バナン錠3日分、ロキソニン4回分投与。
2016年9月12日;消毒。
2016年9月17日;消毒。
2016年9月21日;4件目に高知県の基幹病院の高○大○医学部歯科口腔外科受診
レントゲン撮影。骨の細胞を取り、念のため検査に出す。異常なし。患部の骨をゴリゴリしてキレイにする。外(頰側)の歯茎を切って3針 縫う。ロキソニン1回分、フロモックス3日分投与。医大なら大丈夫だ良くなると期待した。その日の治療後は、痛くて薬局で頂いた
薬をす ぐ服用。自宅へ帰ってすぐ寝る。夕食は少々。夜は寝むれた。
2016年10月16日;抜糸と消毒。
2016年10月20日;消毒。
2016年11月7日;消毒。フロモックス7日分、カロナール5回分投与。
器具で歯茎を押すとズキズキ痛みがあり出血する。ガーゼをつめる。普段の痛みより痛い。3日ぐらいでガーゼが取れる。先生が言うに は、“治りが少し遅いけど、徐々に良くなってきてるので気長くいきましょう。”と言われました。最悪の場合骨を削らなければいけないとも 言われました。私は 悪性でもなかったんだから、開き直っていこうと考え直しました。現在も、ふとした時に
一瞬ズキンとしたり、長かった り 短かかったりチクチクする。左歯茎側面が痛いときもあるが大した痛みではない。
2016年11月15日; 消毒。
治療内容以上です。
宜しくお願いいたします。
- 受診前に送られてきたMail(一部校正)-
疼痛の部位:
6番よりの歯肉周辺と中央部だと思います。
程度:
アクビをした後、ハミガ後、刺激物を食べた後などにチクチク、ズキズキ 痛んだり 止まったり、 違和感があります。普通にしてる時も、 真ん中辺りがズキンと一瞬なります。内ほっぺが傷口に触れているような違和感があります。
転医した理由:
実母が私と同じく抜歯をしましたが、抜歯後の症状の経過が悪く亡くなりました。私も母親のようになるのではないかと恐れを抱きました。完治したさと、わらにもすがる思いで竹内クリニックへ転医しました。その事が一番の理由だと思います(Escapeを決意)。
症状の経過:
抜歯から35日は傷口が痛く傷口が小さくならない。約2ヶ月後、抜歯窩の歯茎が盛り上がってきた。傷口も小さくなって少しずつましにはなってきてると思いますので、後は痛みだけ問題(苦)になります。
以上で、報告終わらせて頂きます。言葉不足で、ご迷惑おかけしてます。申し訳ございません。
よろしくお願い致します。
泣くような激痛を伴っていないので、症状としては軽度であるが、発症後4ヶ月も経過しているのでPSTD(Posttraumatic Stress
Disorder)を考慮していかなければならない。Escapeして来た患者を1泊2日で難治性疼痛から解放するのは至難の業である。
著書“Diathermy”の著作権侵害となるため、禁無断転載・複写。
(図10)2016年11月30日:翌日の患部。VAS:2/10 。すでに創傷治癒が始まっている。当Clinicでは内視鏡画像でREAL TIMEで患者に説明している。内科的Diathermyを応用するので、通常の処置であれば翌日に抜糸できる
(図11)11月30日。翌日に送られたスマフォ画像
(図12)年賀状
●1泊2日の治療で、4ヶ月に及ぶ難治性疼痛を開放する事ができた。
●スマフォの活用は当Clinicのように遠隔地(他府県・海外)から来院する症例には非常に有効である。
・画像が鮮明になり、自撮りできるのは術者側には有り難い。狭い口腔内でも概略は推測できるようになった。
・術者側:昼夜問わずMailで症状の確認ができ、記録が残る 。
・患者側:口頭では聞きづらい事も、時間に関係無く質問ができる。さらに指示されたことも記録が残るので理解しやすい。
●Dry SocketはDryではない。長年Dry Socketを専門に診ているが全ての症例は“乾燥”していない。口腔内なので唾 液で湿潤している。Wet Socketである。Dry SocketはCrawford(1896)が最初に使った名称であり、その後も利用されているが、筆者はAlveolar Osteitisがふさわしい表現と思われる。本症例は歯槽骨の露出も無く、肉芽で覆われ、一部粘膜の上皮化も診られるが、長期間疼痛に悩まされている。Alveolar
Ostitisが診断名としてはふさわしいと思われる。Wet Socketと表現した方が良いかも知れない。
(図1)2016年11月26日。事前に送られてたスマフォ画像。智歯なのか第二大臼歯の抜歯をしたのか送られた画像で一目瞭然。隣在歯が黒変したことも理解出来る。開口度も判断できる
(図3)初診時(2016年11月29日)。57歳。抜歯窩のCONDENSING OSTITISが認められる。下歯槽管の損傷は診られない。難症例ではないようである。前医のSKILLが疑われる
(図4)初診時(2016年11月29日)抜歯後4ヶ月経過しているため、根尖部はすでに骨密度が上がり、透過性が低下している。麻酔奏功が悪く、疼痛下で分割抜歯が行われたようである
(図6)初診時(2016年11月29日)VOLUME RENDARING 像から3次元でSOCKETおよび周辺の顎骨の状態を診断
(図7)初診時(2016年11月29日)抜歯後4ヶ月。一見正常治癒のように見えるが、精査の必要がある。局所麻酔下にてSOCKET内を“やさしく”掻爬。温生理食塩水にて洗浄後、セファメジンαにて洗浄。決して消毒薬などは使用してはいけない。口腔内視鏡を用いた治療は容易に歯槽窩内部も観察できる
(図8)処置後(TOP SECRET)、今回はゼラチンスポンジで創面をやさしく覆い、排出防止と固定目的で縫合。高知県の中核病院でもまだガーゼが使用されているとは呆れる。異物は創傷治癒の妨げである
スマフォの画質が良くなった。F値が低くなり明るくなった。画素数も必要以上に大きくなったので、口腔内も判読できる程度に撮影できる。受診前に状態把握できるので、来院時に即座に処置に取りかかれる。Dry Socketは火災と同様で早い初期消火(治療)で治癒が早くなる。”その内治る”のではQOLが低下する。
四国高知から来院。徳島を経由してフェリーで和歌山市へ。ホテルは当Clinicから徒歩3分の契約ホテルを紹介した。遠隔地から来院する場合は契約ホテルを紹介している。通院時間が短く、緊急時にも来院可能なためである。スマフォを利用し、Mail、画像と電話で限られた時間内で迅速に対応し、QOLを上げることに専念している。
今日はお世話になりました。痛くない治療と、適正な処置をして頂きましてありがとうございました。スタッフの方にも、ご親切にして頂きましてありがとうございました。
5時30分頃 からじんわり痛み出し、現在、ズキズキしてます。夕食は軽くしっかり食べれました。10時に痛め止めを服用して就寝したいと考えています。明日も宜しくお願い致します。
(図9)初診時(2016年11月29日)患部への内科的Diathermy